15 years Story of CHARI&CO NYC

ニューヨーク。世界の中で経済、文化、交通、娯楽などのあらゆる分野において
15 years Story of CHARI&CO NYC 中心的な都市の一つであり、様々な人種とカルチャーが混ざり合う、文字通りの大都会。

2008年に自転車ショップ「CHARI&CO」をニューヨークのマンハッタンにオープン。日本製のクロモリトラックフレームが店内を埋め尽くし、他の自転車ショップと比べても明らかに違った空気を放っていた同店は、やがてショップオリジナルのアパレルを展開する。

自転車ショップでありながらブランドとしても進化していくさまや、これまでに印象に残っている出来事、日本の自転車文化に思うことなどを話してもらった。
実はニューヨークは1年のなかで気温差が非常に激しく、真冬は頻繁に-20°Cを下回ることでも知られる。気温の影響を大きく受ける業態である自転車ショップを、この街で経営していくことの難しさは言うまでもない。加えてそもそもの街が持つ新陳代謝の激しさだ。この土地で10年間以上も自転車ショップを経営していた日本人は他にまずいないだろう。
そんな後藤さんから見るニューヨークと日本の自転車文化の違いとは。

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NY店舗裏のバックヤードの様子。NYの冬は厳しくさながら雪国のそれだ。

気がつけば、自転車ではなくアパレルが店の半分以上のスペースを占めていた。

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- オープン当初は自転車ショップとしての要素が強かったCHARI&COが、現在みたいにアパレルブランドとしても認知されるまでってどういった経緯があったんですか?

きっかけはショップオリジナルのTシャツを作り出した所からです。ただ、当時から単なるショップTシャツとはいえ、自分の性格的にもただ単にプリントしただけっていうのはちょっと…て言うのもあって。ポケット付けたりとか、背中にリフレクター付けたりとか、現在も定番で落とし込んでいる背面のリフレクターディテールなんかも、初期段階からやっていました。

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- そこから一気に知名度が上がっていった感じですか?

当時は自転車レーンの導入とかもタイムリーで、加えて昔からニューヨーカーは健康志向、ECO志向が強いのもあって、街全体としても「自転車」には注目があったように思います。でもやっぱり一番の大きな転機はsteven alan※とのコラボレーションかな。ブランドのプロダクションマネージャーのクリスがたまたまお客さんだったんですけど、steven alan ※は自分がかねてから好きなブランドだったと言うのもあって、じゃあコラボしようよって。

※1994年にニューヨークで創業されたブランド。ひねりの効いたアメリカントラッド、オーセンティックなアメリカンカジュアルをベースに、シンプルかつ着心地を追求したアイテムやスタイルが特徴。

- 個人的には、そういうコラボまでの流れにも、すごくニューヨークっぽさを感じます。

じゃあ何作ろうかってなった時に、元々シャツのブランドだしオリジナルのシャツ作ろうかってなって。首元や袖はリブ、胸のポケットはベルクロでガバッと開閉できるようにしたり、背中にはポケットつけたり…ちょっとアクティブなディテールを折り混ぜたシャツを作ったんです。そしたら、すぐにHYPEBEASTやFRESHNESS MAGAZINEが取り上げてくれることになって。



- ファッション界隈では早くから世界的に影響力あるWEBメディアですよね。

それまでの客層の中心だった「自転車に乗る人」以外で、ファッション界隈の人たちにもお店を知っていただく大きな機会になりました。自分にとって服作りはそこで芽生えたっていうのもあって。

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- なるほど。

steven alanとはその後、冬物のアウターなども作ったりしました。あとは、当時あったストリートブランドの「DQM」で働いていた知人に、NYの某有名ブランドのCAPのOEMをやってる工場なんかをこっそり教えてもらって、キャップを作ってみたり。一方で日本のブランドのバッグや小物など向こうでは珍しいものをセレクトして仕入れてみたり…そうしてると徐々にアパレル系のアイテムが揃うようになってきて、気がつけば自転車よりアパレルが半分以上のスペースを占める、みたいな感じになっていました。



- 自然な流れですね。

その後、2009の終わりから2010ぐらいに BEAMS や BEAUTY&YOUTH など、日本のセレクトショップからも声がかかるようになって。それからは、あくまでショップの屋号として掲げていた「CHARI&CO NYC」が一つのブランドとしても認識され出したのかなって感覚はあります。

- オープンしてわずか1年でそこまで展開があるのが驚きです。何か他のショップとの差別化などで意識していたことってあったりしますか?

口コミやブログでの発信は注力してましたね。スニーカーのバイイングをやっていた時から地道に築いてきたコネクションもあって、今のようなSNSなどが無かった頃とはいえ一定の発信力はあったのかなと。わかりやすいところで言えば、先ほどのDQMもそうですし、あとはA LIFEとか。

なので、ブログで面白いことを書いて、ハイプな人間に口コミでひろげてもらって…みたいな活動は地道に行っていました。それで俳優でありアーティストである ジャレッド•レト がMTVアワードに出演する時用の自転車を買いに来てくれたり。映画『はじまりのうた』(キーラ•ナイトレイ主演)のワンシーンに使われたり。後は、世間のブームの後押しもあって、ちょっと特殊な「いい立ち位置」にいれたのかなとは単純に思います。

口コミやブログでの発信は注力してましたね。スニーカーのバイイングをやっていた時から地道に築いてきたコネクションもあって、今のようなSNSなどが無かった頃とはいえ一定の発信力はあったのかなと。わかりやすいところで言えば、先ほどのDQMもそうですし、あとはA LIFEとか。なので、ブログで面白いことを書いて、ハイプな人間に口コミでひろげてもらって…みたいな活動は地道に行っていました。それで俳優でありアーティストである ジャレッド•レト がMTVアワードに出演する時用の自転車を買いに来てくれたり。映画『はじまりのうた』(キーラ•ナイトレイ主演)のワンシーンに使われたり。後は、世間のブームの後押しもあって、ちょっと特殊な「いい立ち位置」にいれたのかなとは単純に思います。

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バンドThirty Seconds to Mars の ジャレッド・レト と 兄の シャノン・レト


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映画『はじまりのうた』(原題:Begin Again)のワンシーン。キーラ•ナイトレイ扮する失意のシンガーソングライター グレタがNYに出てきて自転車を買うシーンに CHARI&CO NYC が登場。



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ファンならば写真を見ただけでも気付くかも知れないが、名の知れたライダーやスケーター、人気ストリートブランドのディレクター、スタッフ、大御所グラフィティライターやアーティストなど、ストリートシーンのキーパーソンとも密接に関わり、いわゆる自転車ショップとは一線を隠す独自のコミュニティが形成されているのもCHARI&COの独自性ともいえる。左からジョン カーディエル、マイク ヘルナンデス、ジョン イゲイ



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左から ジョナサン ドラッカー、ジョン イゲイ、ケビン クランシー



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左からケン ゴトウ、アレックス コーポラン、ジョバンテ ターナー、マイク ヘルナンデス、ライアン ヒッキー



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ジョン イゲイ、マサン フルーカー、マイク ヘルナンデス



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左からスタッシュ、後藤さん、マイク ヘルナンデス



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NY在中のレジェンドアーティスト達からの贈り物。左からエリック•ヘイズ、KRINK、スタッシュ それぞれが CHARI&CO NYC に寄った時に頂いた貴重なモノ。



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左からジョーイ ピアザ、エドウィン デラロサ、エドワード ワンカ

- 確かに、自転車ショップでありアパレルショップでもあるって言う立ち位置は、独特ですよね。ちなみに最初からプリントTなどのグラフィックとかも後藤さんがやられてるんですか?

そうですね。自分がやることが多いです。でもやっぱりいろんなやり方を試したくなったりもするので、別のスタッフや知人のスケーター、ライダー、著名アーティストやそのアシスタントとか、周りの知人にもお願いしていますよ。とはいえおおよそ自分の目の届く範囲です。初めて日本のセレクトショップで扱ってもらえることになった時でも、現地のプリント屋さんで刷ってもらったTシャツを、ピックアップして箱ごとタクシーに積んで店に運んで、バックヤードのオフィスにあるミシンで自分で背中にリフレクターを縫い付けたりやってましたよ。


背中の裾に縫い付けられたリフレクターテープは、自転車乗りの心をくすぐるCHARI&COのウェアを象徴するディテール。

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Photo : Matt Reyes


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Meguru YamaguchiのミューラルのあるNYのオフィス。



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Kyneとのコラボプロジェクトポスター



これまでに様々なアーティストやブランドたちとのコラボレーションワークを手掛けてきた。こういった柔軟さも、CHARI&COのユニークさを形成する要素のひとつ。気鋭のアーティストが羽ばたくきっかけになったプロジェクトも少なくない。

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G-SHOCKとのコラボレーション



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New Balanceとのコラボレーション



- そうなんですか!まさにDIYですね。もともとミシンの腕前あったんですか?

いや…そこは見よう見まねで。ここだけの話、かなり初期のTシャツなんかはコスト度外視で、付けてるリフレクターの長さが現行のものより倍くらい長かったりします 。



- なるほど 。ちなみに、ルックブックなどのイメージビジュアル、写真とかもご自分で撮られたりすると聞いたんですが。

そうですね。もちろん、自分の視点だけでは面白くないので、最近はカメラマンに頼むことも増えてはきてますが、ほぼほぼ、自分で撮ったりすることが多いです。



- マルチですねー!元々写真はお好きなんですか?

好きですね。
なんていうか、僕はファッション学校出たわけでもないし、有名なメゾンのパタンナーやってて独立したとか、いわゆるファッションブランドではないので…服作りは手探りながらにやってきてる中で、やっぱり写真は最後のアウトプットとして大事にしているっていうのはあります。今でこそSNSなどで当たり前になっているかもしれませんが、スタート当時はブログしかなかったので、伝えると言う点でも写真は大事かなと。どれだけ格好いい服作っても写真が格好悪かったら意味ないというか。



15 years Story of CHARI&CO NYC 実はブランドのルックを自らディレクションし撮影することもしばしば。



15 years Story of CHARI&CO NYC Photo : Ryo Kubota



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Photo : Ko Tsuchiya




- 毎回、ルックブックの写真が格好いいなと思っていたので、そう言うストーリーがあったこと、聞けて嬉しいです。ちなみに店をオープンされた当初に目指していた目標みたいなものってあったんですか?

最初はすごいざっくりで「10年」っていう数字をなんとなく見てましたね。店舗の契約も10年単位だし。でもニューヨークのretail shopって、オープンから3年以内に95%が潰れると言われていて。それだけ家賃も高いし冬は長いし、やっていくことが難しいらしくて。なのでそう言うところで10年やったらすごいなって言う事はなんとなくイメージしていました。


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- その状況で「10年」を目指すことが後藤さんらしいって、インタビュー後半の今なら思います 。そこまでやれる自信というか何か根拠みたいなものもあったんでしょうか?

オープンして3年ぐらいはブームの追い風もあって本当に繁盛したし、実際利益も出ていたんですけど、その後、ピストバイクブームが去ってからは正直に言ってやっぱり厳しい時期も続きました。正直、2015から3年間ぐらいとかはずっと自分に給料も出せていない時期もあって。かなり屈強の中やってました。でも、目標にしてた「10年」は何がなんでもやろうって。



- そうだったんですね。

そのあと2019になる頃には新しい家族も増えていて、やっぱり育てるのは自分のルーツである日本で育てたいなっていう。その他の環境の変化も重なって、NYで10年間以上店舗を構えるという夢を達成しやり切って悔いなくNYの店舗営業を終えたって感じです。今は日本とNYを行ったり来たりしながら現地の仲間とも連絡取りながらの良い距離感です。

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80年代に東海岸でスケートを広めたGizmo。




- なるほど。

結果的にアメリカで、更にニューヨークで日本人が自転車屋を10年以上やってって言うのは他にいないだろって言えるかなって、そのプライドは確固たるものになりました。自分で言うのもなんですけど。



- いえいえ。でも、そもそも日本人がニューヨークで自転車ショップやってるって言うことすらあんまり聞かないですよ。

とにかく「アメリカに行って自分の店を出す」っていう、若いときにやりたかったことを、しかも10年以上。自分が設定した目標もなんとか達成できたわけですし、後悔は全くないです。5年以上ビザの関係で日本に帰国できなかった間は親に心配かけましたけど。



- 今後ブランドが目指すところはありますか?

歳を重ねた中でもカジュアルな気持ちで、ストリートであり続けたいですね。決して自転車に乗るためのプロ仕様の服を作ることを目指しているわけではないので…。例えば「雨でも自転車に乗るために」みたいなストイックな服も多いですが、

なんだったら僕自身やCHARI&COのファンも雨の日は乗らない!バスや電車で良い!みたいなスタンスなんです。世の中には自転車だけじゃなくて、音楽が好きでアートが好きでいろんなカルチャーが好きな人たちがいっぱいいて、極論、自転車だけにものすごくこだわっているわけではなくて。それがNYで感じてきた事だし、そんな中で、やっぱり自転車も単純に乗ると楽しいし生活の一部。NYの空気を吸いながら走るのは本当に最高です。

歳を重ねた中でもカジュアルな気持ちで、ストリートであり続けたいですね。決して自転車に乗るためのプロ仕様の服を作ることを目指しているわけではないので…。例えば「雨でも自転車に乗るために」みたいなストイックな服も多いですが、なんだったら僕自身やCHARI&COのファンも雨の日は乗らない!バスや電車で良い!みたいなスタンスなんです。世の中には自転車だけじゃなくて、音楽が好きでアートが好きでいろんなカルチャーが好きな人たちがいっぱいいて、極論、自転車だけにものすごくこだわっているわけではなくて。それがNYで感じてきた事だし、そんな中で、やっぱり自転車も単純に乗ると楽しいし生活の一部。NYの空気を吸いながら走るのは本当に最高です。



15 years Story of CHARI&CO NYC

それとCHARI&CO NYC の店舗はあらゆる人種のアクティブな人たちが集合場所に使っていたんです。友達同士の待ち合わせ場所で、自転車でお店に集合。そこで空気を入れたりサドルの調整したり裏のバックヤードで一服したり。そこからフットサル、クライミング、ゴルフ打ちっ放し、ロングライド、ランニング、釣りなどその他自転車以外のアクティビティーに向かっていく。 なのでこれからもそういうことを発信していくことが色々なかたちでできればいいと思っています。一方で、ブランドってある種一人歩きするところも感じているので、その中でも、もっとかっこいいブランドを目指せればと思っています。





- ちなみに何か次の大きな動きとかは考えてるんですか?

今はまだないですが…でも基本的には「流れ」は大事にしてます。いろんな人生があっていろんな正解があると思うんですけど、最終、自分が納得さえできればっていうのはずっと思ってて。なんと言うか、自分は職人さんみたいに着々と一つのことを高めていける性格ではなくて。でもそんな自分も「いち自転車屋」を続けられたということに、自転車産業の一端にでも関わってきた感謝みたいなものはあるので何かそこに関わる形で、自分の培ってきた経験で業界に恩返しできれば、なお自分で納得できるというか17年間のアメリカ生活の意義を昇華できそうな気がしています。

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- なるほど。

環境や経済への影響とかもあるんですけど、やっぱり単純に乗ると楽しい。それを伝えるために、自分の経験が活かせてちょっとでも手助けできることがあれば、どんどんやっていきたいと思ってます。



後藤雄貴 (Yuki Goto / CHARI&CO)
2002 年渡米、ニューヨークで2008 年より10 年以上に渡り自転車屋「CHARI&CO NYC」 を経営。自身の自転車チームを結成しREDHOOK CRITやREDBULL MINIDROME RACE などに出場させる。自転車屋経営の傍ら、NY の自転車文化を背景とする自身のブランドCHARI&CO(ショップ名と同名)をディレクションし、これまでにカシオ G-shock, New Balance, Porter, Mountain Dew, Le Coc Sportif, Tenga, Gregory ブリヂストン, CITIZEN, ANYTIME FITNESSなどと協業を果たしてきた。また現代アーティストとのコレクションも多数手がけ、これまでにMeguru Yamaguchi, Kyne, Stash, Yoon Hyup, Rostarr, Rei Nakanishi, Yusuke Hanai, Jun Oson, Hikaru Ichijo などとの協業も果たしている。自転車関連ではSRAM Omnium Crank Set のブラックを世界で初めて色別注するなど、自転車の可能性を求めながら、ニューヨークならではのファッションやストリートカルチャーの知見を広げてきた。



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